Difyとn8nの違いと使い分け完全比較
結論先取り: Difyは「生成AIアプリ構築の高速化」に特化し、n8nは「APIやSaaSをつないだ自動化」に強みがあります。両者を補完的に使うと、AIを組み込んだ業務フローをスムーズに構築できます。
1. それぞれの成り立ちと思想
- Dify: 生成AIアプリケーションをローコードで構築するOSSプラットフォーム。プロンプト管理、フロー設計、ログ分析をGUIで操作でき、LLMベースのサービスを短期間でリリースできる。
- n8n: 汎用ワークフロー自動化ツール。SaaS連携やETL、通知処理などをノーコードで接続し、条件分岐や再試行制御が柔軟。LLM以外の業務自動化もスコープに含める。
2. 機能比較表
| 観点 | Dify | n8n | コメント |
|---|---|---|---|
| 主目的 | LLMアプリ開発 | ワークフロー自動化 | 目的が明確に異なる |
| フロー表現 | ブロックベース(チャットフロー、ワークフロー) | ノードベース(汎用) | Difyは会話設計に最適化 |
| LLM管理 | モデル切替、エンドポイント連携、プロンプトバージョン管理 | OpenAI ノード等で任意APIを呼び出し | LLMベースの可視化はDifyがリッチ |
| データ連携 | Knowledge Base、ベクターDB、トレーシング | 400+ SaaS/DB/APIと連携 | n8nはDataOps寄り |
| デプロイ | Webアプリ/エンドポイント生成、SDK提供 | セルフホスト、本番用ワークフロー | Difyは即時にエンドユーザー向けUIを提供 |
| 料金体系 | OSS + 有料クラウド | OSS + 有料クラウド | どちらもセルフホスト可能 |
3. 典型的なユースケース
Difyが得意
- 社内チャットボット: 知識ベース + フロービルダーで対話体験を用意。
- プロンプト実験: プロンプトバージョニング機能でABテストがしやすい。
- API公開: LLMに指示を与えるエンドポイントを即時に公開できる。
n8nが得意
- SaaSのイベント駆動連携: Salesforce→Slack・Notion→Teamsなど。
- 複雑な条件分岐/リトライ: 失敗時のフォールバックやループ処理が簡単。
- LLM以外の自動化: CSV処理、ETL、監視アラートなど幅広く対応。
4. 連携すれば強力になる理由
- Difyで構築したチャットボットのWebhookエンドポイントをn8nで呼び出し、前処理・後処理を自動化。
- n8nで収集したログやデータセットをDifyのKnowledge Baseに定期投入し、最新情報を学習させる。
- エスカレーションフローをn8nで制御し、閾値に応じてDifyのチャットウィジェットに判断を委ねる。
flowchart LR
subgraph ユーザー
U1[Slack利用者]
end
subgraph n8n
N1[Webhook Trigger]
N2[データ正規化]
N3[ログ保存]
end
subgraph Dify
D1[チャットフロー]
D2[LLM応答]
end
U1 --> N1 --> N2 --> D1 --> D2 --> N3 --> U1
5. 意思決定のチェックリスト
| 質問 | Yesのとき | Noのとき |
|---|---|---|
| エンドユーザー向けUIを即日提供したいか | Dify優先。UIが自動生成される。 | n8nでAPIのみ提供し、UIは別途開発。 |
| 多数の業務SaaSと接続する必要があるか | n8n。400+連携と細かな制御が可能。 | Dify単体でもWebhook連携は可能。 |
| プロンプトのABテストやログ分析をGUIで行いたいか | Dify。標準機能が充実。 | n8nでも実現可能だが実装コストが高い。 |
| 再試行・遅延・並列処理が必須か | n8n。細かなフロー制御に強い。 | Difyはシンプルなチャット中心。 |
| モデルを自由に切り替えたいか | DifyはUIで切替可能。n8nはノード設定でAPIキーを変える形。 |
6. メリットとデメリット
Difyのメリット
- プロダクトとして完成度の高いチャットUIと管理画面。
- プロンプトとモデルのバージョンを履歴管理できる。
- ワークフロー内でベクター検索や計算ノードを組み合わせられる。
Difyのデメリット
- SaaS的なイベントトリガーは弱く、Webhook起点が中心。
- セルフホストのセットアップにやや時間がかかる (Redis、PostgreSQL、Qdrant等が必要)。
- 細かな再試行制御やループ処理はシンプルなUIに限定される。
n8nのメリット
- ほぼすべてのノードでエラー時の
Continue On FailやRetry On Failを制御でき、堅牢なフローを構築可能。 - OSSとしてアクティブに開発されており、ノードの追加が頻繁。
- セルフホストが容易で、Docker Compose一枚で立ち上げられる。
n8nのデメリット
- LLM特化機能がなく、プロンプト管理は自力で行う必要がある。
- エンドユーザー向けUIが標準で用意されないため、別途フロントが必要。
- 大規模フローになると視覚化が複雑化しやすい。
7. 組み合わせアーキテクチャ例
- 問い合わせ自動応答: SlackのSlashコマンド→n8nで情報収集→Difyチャットボットで回答生成→n8nがログ保存。
- 社内ナレッジ強化: n8nが日次でGoogle Driveからドキュメントを取得→テキスト抽出→Difyにアップロード→検索性の高いチャットを提供。
- 意思決定支援: n8nがKPIダッシュボードから数値を取得→Difyで意思決定テンプレートに当て込み→結果をConfluenceへ投稿。
8. 初心者が最短で習得するステップ
- Step 1: n8nのテンプレートでWebhook→Slack通知を作成。
- Step 2: Difyクラウドの無料枠でチャットフローを作り、Knowledge Baseに社内FAQを登録。
- Step 3: n8nからDifyのAPIを呼び出し、入力データを渡す簡単な連携を作る。
- Step 4: エラー処理やログ保存をn8nで強化し、Dify側で応答品質をモニタリング。
- Step 5: 両者をDocker Composeでセルフホストし、社内運用ポリシーに合わせて権限を整備。
📝 まとめ: Difyとn8nは競合というより「フロントに強いDify」「バックエンドの自動化に強いn8n」という関係です。ユーザー体験を素早く提供したいときはDify、複雑な業務連携や信頼性が重要なときはn8nを使い分け、両者を連携させて価値を最大化しましょう。
